Palantir AIP Logicとは?仕組み・使い方とFDE実務での活用法

- 入力を定義Ontologyオブジェクトや文字列など、関数が受け取る入力を設定する
- ブロックを配置Use LLMブロックにプロンプトと参照ツールを設定し、処理を組み立てる
- デバッガで検証テスト入力で実行し、各ブロックの推論過程と出力を確認する
- 評価で品質確認テストケースを用意して出力のぶれや誤りを継続的にチェックする
- 公開して組み込み関数として公開し、WorkshopやAutomateから呼び出す
- ノーコードのブロック操作で構築できる
- LLM呼び出しとOntology参照が標準で揃っている
- デバッガで推論過程を可視化しやすい
- 業務担当者とFDEが画面を共有して改善できる
- 複雑な分岐や計算処理を細かく制御できる
- テストやバージョン管理を開発者の流儀で運用できる
- LLM以外の決定的な処理に向いている
- AIP Logicから呼び出す部品としても使える
Palantir AIP Logicとは何ですか?
Palantir AIP Logicは、LLMを組み込んだ関数をノーコードで作り、Ontologyと連携させるための開発環境です。Palantir Foundry上のAIP(Artificial Intelligence Platform)の機能の一つで、業務ロジックの中にLLMの推論を安全に組み込むために使われます。
AIP Logicで何ができるのか?
AIP Logicを使うと、Ontologyのオブジェクトを入力にしてLLMで判断し、結果を返したり書き込んだりする関数を作れます。ノートブックやチャット画面で試すのとは違い、作った処理は「関数」として公開され、ほかのアプリケーションから呼び出せます。
代表的な用途は次のとおりです。
| 用途 | 入力(例) | AIP Logicの出力(例) |
|---|---|---|
| 分類・タグ付け | 問い合わせ、障害報告のオブジェクト | カテゴリ、優先度 |
| 要約・抽出 | 長文の報告書、議事録 | 要点、構造化した項目 |
| 意思決定支援 | 在庫・需要・制約のオブジェクト | 推奨アクション案 |
| 書き込みの自動化 | 判定結果 | Ontologyへのアクション適用 |
ChatGPTなどの汎用チャットと何が違うのか?
AIP Logicの一番の違いは、LLMが自社のOntologyと権限モデルの中で動くことです。汎用チャットだと、データの持ち込みや結果の反映を人が手作業でやる必要があります。AIP LogicではLLMが参照できるオブジェクトや実行できるアクションをツールとして明示的に渡すので、「何に触れられるか」を設計者がコントロールできます。
現場の感覚でいうと、AIP Logicは「LLMを試す場所」というより「LLMを業務フローの部品にする場所」です。PoCで止まりがちな生成AI活用を本番業務につなぐ役割を担っている、という捉え方が実態に近いと考えています。
AIP Logicの仕組みはどうなっていますか?
AIP Logicは、入力・ブロックの連なり・出力で構成される関数で、LLMにはOntology操作をツールとして渡します。中身は宣言的なワークフローに近く、各ブロックが順に実行されて結果を次のブロックへ受け渡します。
AIP Logicを構成する要素は?
AIP Logicの関数は、入力、ブロック、ツール、出力の4つの要素でできています。Palantir公式ドキュメント(AIP Logic overview)の説明に沿って整理すると、次のようになります。
| 要素 | 役割 | 具体例 |
|---|---|---|
| 入力(Inputs) | 関数に渡す引数 | オブジェクト、オブジェクトセット、文字列、数値 |
| ブロック(Blocks) | 処理の単位 | LLMの利用、関数の実行、アクションの適用、条件分岐、ループ、変数の作成 |
| ツール(Tools) | LLMブロックが使える機能 | オブジェクト検索、関数呼び出し、アクション適用、計算機 |
| 出力(Output) | 関数の戻り値 | 文字列、オブジェクト、構造化した値 |
中心になるのはLLM利用ブロックです。プロンプト、使うモデル、ツール、出力の型をここで定義します。出力の型を指定しておけば、自由文ではなく後続処理で扱いやすい形の結果を受け取れます。
Ontologyとの連携はどう実現されているのか?
AIP LogicはOntologyのオブジェクト・リンク・アクションを直接参照し、Foundryの権限設定をそのまま引き継ぎます。LLMがアクションを提案・実行する場合も、Ontologyで定義済みのアクション(バリデーションや権限チェックを含む)を通ります。そのため、データベースを直接書き換えるような事故が構造的に起きにくくなっています。
また、各ステップの入出力やLLMの推論の経過はデバッガで確認できます。どのツールをどの引数で呼んだかを追えるので、品質改善のときに原因の切り分けがしやすくなります。
AIP Logicの作り方の手順は?
AIP Logicの作成は、入力の定義、ブロックの組み立て、デバッグ、評価、公開の5段階で進めます。いきなり複雑なフローを組むより、LLMブロック1つから小さく始めて段階的に広げるほうが失敗しにくい進め方です。
基本の作成ステップは?
AIP Logicの基本手順は、Foundry上で新しいLogicファイルを作り、入力から出力までを順に定義する流れです。
- 入力を定義する:対象のオブジェクトタイプや引数を決めます(例:「問い合わせ」オブジェクト1件)。
- ブロックを組み立てる:LLM利用ブロックにプロンプトと出力の型を設定し、必要に応じて条件分岐やアクション適用ブロックを足します。
- ツールを渡す:LLMに許可するオブジェクト検索やアクションだけを最小限で選びます。
- デバッガで試す:実データを入力して、各ブロックの入出力とLLMの推論を確認します。
- 評価して公開する:テストケースで精度を確かめてから公開し、Workshopやアクション、オートメーションから呼び出します。
品質を上げるためのコツは?
AIP Logicの品質は、プロンプトの工夫よりも「渡す情報とツールの絞り込み」で決まることが多い印象です。必要なプロパティだけを渡し、出力の型を厳密にしておくと、結果のばらつきが目に見えて減ります。
| 改善の観点 | やること | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 入力の絞り込み | 判断に必要なプロパティだけ渡す | ノイズが減り、コストも下がる |
| 出力の型の指定 | 列挙型や構造化出力を使う | 後続処理で扱いやすくなる |
| ツールの最小化 | 許可するアクションを限定する | 誤操作のリスクが下がる |
| 評価の仕組み化 | AIP Evalsでテストケースを管理する | 変更による劣化を検知できる |
AIP Logicとコードで書く関数の使い分けは?
判断や自然言語の解釈が要る処理はAIP Logic、決定的な計算や複雑な処理はコードの関数が向いています。どちらか一方に寄せるのではなく、AIP Logicからコードの関数を呼び出す組み合わせが実務では一般的です。
それぞれの得意分野は?
AIP Logicは曖昧な入力を扱う処理に、TypeScriptやPythonで書く関数は厳密さが要る処理に向いています。Foundryでは、Code Repositoriesで書いた関数をAIP Logicの関数実行ブロックやツールとして呼び出せます。
| 観点 | AIP Logic | コードで書く関数(TypeScript/Python) |
|---|---|---|
| 得意な処理 | 分類、要約、抽出、判断支援 | 集計、計算、厳密なビジネスルール |
| 開発のしやすさ | ノーコードで素早く試せる | エンジニアリングの知識が要る |
| 結果の再現性 | LLMなので揺らぎがある | 同じ入力なら同じ結果 |
| テスト | AIP Evalsで評価する | ユニットテストで担保する |
| 担い手 | 業務担当者も参加しやすい | 主にエンジニア |
迷ったときの判断基準は?
「同じ入力なら必ず同じ答えが返るべきか」で判断すると、たいてい迷わずに済みます。料金計算や在庫の引き当てのように正解が一つに決まる処理はコードで書き、AIP Logicからはそれをツールとして呼ぶだけにします。LLMに計算をさせないことが安定運用の基本です。
FDE実務でAIP Logicはどう活用されますか?
FDEにとってAIP Logicは、顧客の業務課題をその場で動くプロトタイプにして合意を取るための道具です。FDE(Forward Deployed Engineer)は顧客の現場に入り込んで課題を解く職種なので、作るまでの速さがそのまま価値になります。
顧客現場でどんな使い方をするのか?
FDEはAIP Logicを、ヒアリングで聞いた業務判断を短期間で再現し、現場の担当者と一緒に磨き込むのに使います。典型的な流れは次のとおりです。
- 現場担当者が日々行っている判断(例:問い合わせの振り分け、異常の一次判定)を観察する
- 判断に使っている情報をOntologyのオブジェクトとして整理する
- AIP Logicで判断ロジックを組み、実データで現場担当者に見てもらう
- 「この場合は違う」というフィードバックを評価ケースに足して改善する
- Workshopのアプリやオートメーションに組み込み、業務フローに乗せる
Palantirが顧客と短期集中で実施する「AIP Bootcamp」でも、AIPの機能を使って実際のユースケースを数日で形にするやり方が紹介されています。ここで大事なのは、AIP Logicの操作スキルそのものより、業務のどこにLLMの判断を差し込むかを見極める力だと感じます。
FDEに求められるスキルは何か?
AIP Logicを使いこなすFDEには、Ontologyの設計力、業務理解、LLMの限界を見極める判断力の3つが求められます。
| スキル | 内容 | AIP Logicとの関係 |
|---|---|---|
| Ontology設計 | オブジェクト・リンク・アクションのモデリング | 入力とツールの質を決める |
| 業務理解 | 現場の判断基準を言葉にする | プロンプトと評価ケースの元になる |
| LLMの見極め | LLMに任せる範囲を判断する | コードとの役割分担を決める |
| コーディング | TypeScript/Pythonでの関数開発 | 厳密な処理を補完する |
ノーコードだからエンジニアは要らない、ということにはなりません。むしろ、ノーコードでは表現しきれない部分をコードで補い、全体を設計できるFDEの価値は高まっていると考えられます。
AIP Logicを本番運用するときの注意点は?
AIP Logicの本番運用では、出力の揺らぎ、書き込み操作の統制、評価とバージョン管理の3つを押さえる必要があります。プロトタイプでうまく動いたからといって、そのまま全面自動化するのは避けたほうが無難です。
品質とリスクをどう管理するか?
AIP Logicの品質管理は、評価ケースを継続的に回す仕組みと、人による確認を組み合わせて行います。主な注意点は次のとおりです。
| リスク | 起こりうること | 対策 |
|---|---|---|
| 出力の揺らぎ | 同じ入力で判定が変わる | 出力の型の制限、評価ケースの拡充 |
| 誤った書き込み | 不適切なアクションが実行される | 人の承認を挟む、ツールを最小限にする |
| モデル変更の影響 | モデルを更新したら精度が変わる | 公開前にAIP Evalsで回帰テストする |
| コストの増加 | 大量実行で費用がかさむ | 入力の絞り込み、実行対象の限定 |
特にアクションを伴う処理は、最初は「LLMが提案し、人が承認する」形で始めるのがおすすめです。精度が安定したことを確かめてから自動化の範囲を広げると、現場の信頼を損なわずに済みます。
運用体制で気をつけることは?
AIP Logicを長く運用するには、関数のオーナーと評価ケースの更新ルールをはっきりさせておくことが欠かせません。業務ルールが変われば、プロンプトも評価ケースも古くなります。誰が変更を承認し、どのテストを通れば公開してよいかを決めておくと、属人化を防げます。
顧客にAIP Logicを引き渡すFDEの立場からいえば、作り切ることよりも、顧客が自分たちで直し続けられる状態を残すことのほうが重要です。ドキュメント、評価ケース、変更手順をセットで渡せたときに、はじめてプロジェクトが成功したといえるのではないでしょうか。
※本記事の機能説明は、Palantir公式ドキュメント(Foundry「AIP Logic」「AIP Evals」関連ページ)を参照しています。画面名や機能の範囲はアップデートで変わることがあるため、最新情報は公式ドキュメントで確認してください。
補足:今回は手元の知識だけで書き、Web検索による出典の照合はしていません。とくに次の3点は、公開前に監修者がPalantir公式ドキュメントと照らし合わせて確認してください。
- ブロックとツールの名前・種類
- AIP Evalsとの連携
- AIP Bootcampの説明
本文に具体的な数値や実績は入れていません。





